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PSO2ライフでのできごとや、想いを綴る場所。
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キャラ名:十六夜・蓮華
所属チーム:IRIS-イーリス-
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一言:自己中です(*'ω'*)
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一人の少女が紡いだ、絆の物語。

勝手にイメージソング=『Our Fighting』:クーナ(喜多村英梨)

vol.1:読みに行く
vol.2:読みに行く
vol.3:読みに行く
vol.4:読みに行く
vol.5:読みに行く
vol.6:読みに行く
vol.7:ここ
ALL:まだ

《今回の前書き》
レンジャーだと思った? 実はガンナーでした(*'ω'*) 誰の事から本編から。
なんにせよ、この物語を書こうというきっかけになったシーンをようやく書けました。
ここまでくるのに随分と長い前振りをしましたが、もう満足です。
未だ完結してないのに終わった気になりますねw
このまま最後まで載せようと思ったのですが、いかんせんエピローグも加えると
結構な量になるので、もう1度だけ分けさせてもらう事になりました。
ホント、何をもって原稿用紙30枚程度と考えたんでしょうね、書く前の私は(´・ω・`)

*気付いてる方もいるかもしれませんが、
 忍者ブログの仕様なのか、このテンプレの仕様なのか。
 記号の『ダッシュ』が上手く表記されません。
 前回分まで一応見やすいように別の変換にはし直してたのですが、今回はそのまま載せます。

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 光に依り影が射すのではなく、言うなれば影そのものが大地を覆った。といったところか。砂漠の星らしく、力強く射していた陽の光はソコには無く、イーリスが見上げた空は一瞬にして、赤黒く染まり上がっていた。
 血を象徴するような。炎が燃え上がるような。そんな一般的な比喩ではなく、もっと別の――そう、或る意味でよく識っている禍々しさ。異常を謳うその空際の果てに、イーリスの眼は確かに捉えた。
「あ、アレって……人――?」
 距離故に、輪郭は勿論表情は掴み切れないが、宙に浮かぶ人影を。
 当然のように湧き上がる疑心が応えを出す前に、状況は更に段階を得る。負の方向へと――。
『ふ、再び中央……0時の方向に大型の敵性反応! 今までにない程大きな反応がきますよ!!』
 メリッタの通信よりも早く、アークス全員は眼にしていた。
 空間を歪ませ、尚も狭しと言わんばかりに強引さが窺える程の転移。力そのものだけではなく、個体自身の物体としての大きさ。空間を引きちぎるように現れたソレは、今しがた倒したダークラグネよりも一回りは優に大きい蟲。
 黒光りした全体像。爪に護られているかのような、眼球とも思えるコアを持つ腕。そして、臆する事無く頭部から突起したその角はまるで、“王”を象徴しているようにも見える。降り立った際に起こった震動は、何よりも威圧を訴えた。
 間を置く素振りも無く、威風を讃えるかのように、一歩ずつ確かにその巨体を拠点へと進撃を開始した。
「な……何アレ。あんなのから本当に――」
 一人離れた位置でその“敵”を眼にしたイーリスが、弱々しく漏らす。未知と言うだけでも充分に脅威であるというのに、トラウマとして根付いていたダークラグネをも凌ぐ凶兆。張り詰めた糸が切れるのは、当然の事でもあろう。
 だが、ソレを支えた――或いは、結んでみせたものが在った。
「さっきの四人でビブラスの陽動と撃退を受け持つ。残りは後方で、拠点の防衛を頼む!」
 通信の声はギル。三方に分かれてしまっていた状況では、肉声では意思疎通が不可能が故のもの。その声に、何名かの応答が入る。
 ダークビブラスの足下及び後方には、ゴルドラーダが次々と姿を現していた。コレまでにない、夥しい数だ。イーリスは身をもって識っている。
 彼の者の、自爆という特性を。
 あの数が一斉にソレを仕掛けたら、一体どれだけの被害が出るのか。生憎と彼女には想像がつかなかった。だからこそ、より恐ろしく感じた。
 しかし、他の者はそうではないのだ。
 イーリスが竦んでいるその数秒という時間に、既に動き始めていた。まずは集中で強襲してくるであろう、ゴルドラーダの迎撃の為に、東西に分っていた七人が中央拠点へと集合していく。
 敵の行軍速度からするに、ダークビブラスとゴルドラーダの着点はほぼ同時と成ろうか。ソレにも、誰一人臆する様子を見せずに動く。
 そんな状況に、イーリスは一つの疑問を抱く。
 此度の強襲を凌ぐには、支援兵装のバリアが必要不可欠だろう。では、敵の矛先である中央拠点には今、そのエネルギーが重鎮されているのか?
 イーリスは唯正結晶を拾い集め、ソレをソケットへと収容していただけ。肝心の、そのエネルギーの還元具合を管理していたのは――。
「……イー――」
「イーリスちゃん、続けて結晶拾いお願いね! もう少しで、すんごいの出せるから!」
 何か云い掛けたギルの言葉を切って、プルミエールの声が通信に響いた。同時にイーリスは、反射的に声の主の方を向いていた。
 何処に居るのかは……いや。向かう先は判っていたから、その眼は直ぐにプリミエールの姿を捉える。既に眼前となったダークビブラスに、臆するどころか立ち向かっていく少女の姿。
 ――そう。イーリスが集め還元されたエネルギーを把握し、ソレを伝達していたのはプルミエール。
 もし、彼女がその役割をしていなかったら。もし、この作戦に彼女が居なかったら。もしも、この作戦にイーリス(じぶん)が参加していなかったら。
 様々な仮定が、脳裏を巡る。
「――はいっ!」
 だが、イーリスは直ぐにソレを振り払い、行動に出た。無論、プルミエールの言葉に応えるべく、だ。
 仮にこの作戦に自分が居なかった場合、他の誰かが代わりを務めるのだろう。その際も恐らく、プルミエールは伝達役をしているだろう。ソレが、イーリスが彼女に抱く印象故の結果。
 とはいえ、ソレは仮の話であり、今こうして二人が同じ時間同じ場所に居合わせ、出逢ったのが現実。その現実(いま)で、プルミエールはイーリスに向けて指示を出した。
 プルミエールからすれば単に、作戦上に於けるものに過ぎないかもしれない。けれど、ソレでもいいと想っていた。
 アークスに就任し、今に至るまでの殆どを独りで過ごしてきたイーリスにとって、こういった大規模な作戦の中で声を掛けたくれただけでも、充分な価値があった。自分にもできる事が在るのだと、肯定してくれた。
 今は、ソレだけで充分だった。
 十二名のアークスが意志を一つに、それぞれの行動を取った刹那。最後の攻防が始まりを告げた。
 ゴルドラーダの群れを掻い潜り、ギルとカイトが先ずはビブラスに攻撃を仕掛ける。注意を逸らす為だ。巨体が表すように、硬い甲殻に攻撃を弾かれながらも、逆に巨体が故に護り切れていないコアを目掛ける。その足元を衝いて、プルミエールと装束の男が片足を集中的に攻撃。ダークラグネと同様、そのバランスを崩してしまおうという思惑だろうか。
 その激突を余所目に、ゴルドラーダの群れは拠点へと到達する。ソレを最初に阻んだのが、ユノともう一人が放ったゾンディール。雷の属性が創り出した電磁場に依り、その範囲に入ったゴルドラーダが渦へと吸い込まれていく。猪突猛進とでも言うのが正に適切な程に駆けていた敵が、いとも簡単に散り散りとなった。
 しかし、ソレだけでは簡単には対処し切れない。
 数が多いのも然る事ながら、本能に依るものか唯の偶然か。ゾンディールの渦をまるで避けるように宙へと飛び、拠点への距離を縮める個体が現れる。ゾンディールで敵を分断できるとはいえ、当然ソレにはテクニックを維持する必要がある。発動しながら他の攻撃手段を取る事は両者ともに可能ではあったが、高い集中力が要される事もあり、攻撃面では決定打に欠ける。ほぼ必然的に、集められた敵を他の者が叩くという戦法になる。
 敵の分断だけでなく、倒す必要がある以上、アークス達もまた戦力を分断せざるを得ない。
「よーし、エネルギーおっけー。バリア張れるよ!」
 拠点への幾度かの直接攻撃を許しながらも応対していた最中、プルミエールの通信が響いた。ソレに最も早く反応したイカロスが、コンソール端末にアクセスし、バリアを展開してみせる。拠点の張り付きに成功していた敵は動きを止め、イカロスはソコを透かさず衝く。
 周囲でも、ゾンディールに束ねられた敵を撃破していく。所々で自爆する様が見られたが、拠点は勿論アークス達にコレといった被害は見えない。
 このまま、状況が安定していくかのように思えた、その時だ。
「――おい後方、気を付けろ!」
 通信に響いた荒い声の主は、ダークビブラスと応戦中の装束の男。その声につられイーリスが眼にした光景は、彼女を絶句させるのに充分だった。
 対峙していた筈の男の周囲に、ダークビブラスの姿は見えなかった。正確には、彼が立つ地面を軸に――だが。
 標的は、宙に居た。
 双小剣を操り、空中戦を得意でするであろうギルよりも更に高くにだ。ダークラグネもその巨体で、一気に出現位置から拠点までの距離を零にする事はやってのけた。ソレを識っているならば、ダークビブラスにも同じ事をしても納得のいく範囲であろう。
 だが、今回は違う。
 ダークラグネはその巨体で跳んだ。数秒の滞空時間は存在したが、あくまでその行動は跳躍である。反してダークビブラスはと言うと、背部コアを護るように覆っていた殻が羽と成り、その巨体を飛翔させていた。
 カイトは勿論、ギルも滞空時間の限度を迎え、着地を余儀なくされる。対する標的は尚も宙だ。そしてそのまま、上腕から赤黒い弾を交互に発射。
 恐らくはエネルギーが凝縮されたモノだ。巨体から生み出されたその弾の威力は、一部始終を眼にしていたイーリスの動きを完全に止めた。
 発射された弾が向かった先は、中央拠点。その時、確かにイカロスが展開させたバリアは活きていた。
『中央拠点、残耐久値七十パーセントを切りました!』
 メリッタの通信が、その結果を伝える。
 バリアを容易く貫通し、張り付いていたゴルドラーダを巻き添えに着弾した弾は、大きな爆発に見合った威力を周囲に知らしめた。ソレに巻き込まれた何人かが負傷し、レスタの光輝が走る。その間にも、自身等を巻き込む攻撃に何ら興味を見せる素振りはないまま、ゴルドラーダの強襲は続いていく。
「~~~~東方向に敵性反応! 誰か二人、私に続いて!!」
 追い討ちとでも言わんばかりに、別の方角に新手の群れが出現。いち早く気付いたユノが声を上げ、彼女を筆頭に三人がその対応に向かった。
 好転するかに見えた状況は、寧ろ嘲笑うかのように暗転した。中央にも更に増援が姿を現し、戦力は完全に分断された。
 ソレが功を奏したのかは定かではないが、イーリスは行動を再開し、正結晶を集め始めた。
 拠点防衛側に合流する事もできたが、そうしなかったのは役目ではないから。現状を観るに拠点のバリアの有効性は失われたわけではなく、戦力が分断された現在となっては更に増したと言える。だからこそ、エネルギーの重鎮時間が重要となる。
 今その役目を担っているのがイーリス。目まぐるしく移り変わる戦況の最中で、役目を交代する事は不可能であり、放棄する事は何よりも論外とも言える。そして、ソレは彼女にとって裏切りに当たる行為であり、最初から選択肢が存在していなかった。
 イーリスを衝き動かすのは、プルミエールの言葉。想像はつかないが、在るのだ。この状況下をも覆す事のできる、バリア以上の何かが。今はその何かに縋るしかない。そして恐らく、他の者も同じなのだろう。
 そう判断したイーリスは、荒れる息を呑み込みながら、駆け回った。
 その最中、ダークビブラスが飛翔を止め、再び大地へと降り立つ。生じる衝撃はさながら地震のような響きを伝えた。
 とはいえ、アークスにとってコレは願ってもない事であり、対応に当たっていた四人が好機とばかりに一斉に距離を詰める。
 だが、その四人の表情が一瞬にして曇る。
「~~~~ボムだ! 標的は――」
 そうさせたのは、ダークビブラス。正確には、その行動か。ギル達四人が距離を詰める間に、“溜め”をつくる姿勢を取った、その刹那。赤黒く禍々しい球体を生成したかと思うと、間髪も無くソレを――投げた。
 上腕部から発せられた、エネルギーの弾とはまた異質の物は弧を描きながら、宙を舞う。
「――緑拠点!」
 誰のものと識れない声が、通信の中を入り混じる。切迫とした空気の中で、状況を把握し切れない者も居た。
 しかしその声と同時に、“二人”が確かに動いていた。
 一人は、中央拠点に位置しているイカロス。
 洗練された動きと培ってきた経験に依り遠目からダークビブラスを捉えていた彼は、恐らくは後方部隊の中でいち早くソレに気付いた。その判断と行動の早さは申し分なく、彼の位置的にも未だ滞空する球体への対応は充分に可能な――筈だった。
「――っ!? こ、これは……」
 声を上げたのは、イカロス。そしてあろうことか、緑拠点へと向けていた足を止めていた。いや、寧ろその足は躰ごと紫拠点へと巻戻る動きを取る。
 そうさせたのは、紫拠点に群がるゴルドラーダ数体。
「ゾンディール……!?」
 自身を中心に展開された薄紅の磁場は、フォトンの属性さえ違えど正しくゾンディールだった。
 初めから使えたのか、それとも学んだのか。どちらにせよ問題なのは、敵の手に嵌った事実。イカロスが捕まったという事は当然、残る三人も同様に、ゴルドラーダの展開する磁場の渦に捕らわれていた。東に位置取ったユノ達では、どうやってもカバーできる距離ではなく、何よりも彼女等も未だ応戦の最中にあった。
 ソレはつまり――。
「イーリス、ソコから離れろ!!」
「……えっ?」
 緑拠点の在る西方面で活動していたイーリスが、一人で対面する事を意味した。
 イカロスの叫びが届くよりも早く、優雅な宙の旅を終えた球体は、無言でイーリスの前に降り立った。音も無く声も上げず、二度三度とその躰を転がせてみせたソレを捉えた瞬間、彼女に戦慄が走る。
 恐怖よりも凄まじい、危機感。一瞬で躰中が鳥肌で埋め尽くされるような、それ程の警報だった。
 視界に映る球体の正体など、イーリスに判る筈はなく、状況からすれば彼女が取る行動はイカロスの言葉に従い逃げる事が適切だと言えよう。
「う……わあああぁぁぁー!」
 しかし、イーリスが取った行動は真逆だった。
 雄叫びにも声と伴に彼女が向かったのは、機銃の取り付けられた銃座。ソレは先程彼女がグワナーダに襲われた際に援護に駆け付けた誰かが呼び出していた、偶然の産物。コレさえなければ、素直にその場から退避していたであろう。
 使う機会が無かったものの、気には留めていた事から脚は迷わずに銃座へと辿り着かせる。未だ態勢もままならないまま、傍から見れば振り回されているような旋回で銃口を球体へと向ける。
 躊躇も無くイーリスが引き金を引いた刹那、機銃が轟音を上げながら無数の鉛玉を吐き出した。
 引き金に加わる力が、次第に強まる。その最中、通信から複数の声が上がったが、イーリスには届かなかった。機銃の上げる発砲音が原因にあるにはあるが、何よりも彼女が標的へと向ける集中力がそうさせた。
 結論から言えば、誰かが通信で叫んだ通り球体の正体は爆弾(ボム)であり、コレが爆発すれば拠点は陥落する。勿論、その範囲に居るもの――この場合はイーリスも、然りだ。
 そもそも何処までが偶然なのか。
 当初は、ダークビブラスと紫拠点の防衛。そして正結晶収集という三面での戦いだった。ソレが、東方面への新手により四面と成り、僅かな隙を衝いてダークビブラスは緑拠点へと攻撃を仕掛けた。一人しか“敵”が居ないにも拘わらずだ。
 思い返せば、孤立という形になっていたイーリスを襲った、グワナーダもそうだ。特性上、不意打ちに依る確実な手段と見れば不思議ではないが、戦力を削る事を考えれば寧ろ、戦闘に直接参加していなかった彼女を襲うよりも、脅威となる主力を襲う方が効果は大きい。
 では、狙いが元よりイーリスであったなら――?
 彼女が担っているのは、正結晶を収集し、支援兵装のエネルギー重鎮を早める後方支援。その効果は立派に前線を支え、文句のない貢献と成った。言い換えれば、この作戦の柱とも言える。結果、グワナーダは失敗に終わったが、若しもこのまま爆弾が爆発すれば、拠点の一つを落とす事は勿論、ダーカー側にとって厄介な“敵”の支援役が居なくなる事に繋がるのだ。
 布石を絡めた策じみた一連を、ダーカーが考えるだけの知能が有るのかは不明である。だが少なくとも現状は、その通りに進もうとしている。
「く……っ」
 イーリスが更に手に力を込める。無論、意味はない。既に目一杯まで引き切った引き金が、ソレに応える事は無いのだから。そう解っていながらも、彼女は力を強める。
 同時に、想いを込めて。
 親からか教官からかは定かではないが、過去の教えに従った、無意識の行動だった。
 
――行動にしろ言動にしろ、ソレに想いが無ければ意味はない。逆に、どんな逆境や困難な場面に於いても、想いが在れば必ず何かが、誰かが応える。

 生真面目な彼女はその言葉をいたく気に入り、知らぬ内に信念としていた。だから只管に、機銃を支える手に。引き金を引く手に力と伴に想いを込めた。
 だが、そんなイーリスの想いに無機質な機銃は、応えはしなかった。
「――っ!?」
 ふと、顔を伏せ気味で爆弾を視界から外していたイーリスが顔を上げる。尚も響く轟音の中に、違和感を訴える乾いた音が一瞬響いた気がしたせいだ。
 顔を上げたおかげで再び爆弾を捉えた視界が、その違和感を否定する。
「あ、あれは――ウィーク……バレット……?」
 つい先ほどまでは確かに無かった、赤い印(いん)が爆弾に貼り付いていた。アフィンと何度か任務を同行した際に、彼が必死に強調していた技(スキル)だ。
 この場でソレを使える(可能性が在る)のは、イーリスが識る限り一人だけ。
「おっまたせー!」
 無機質な機械の代わりにイーリスの想いに応えたのは、仲間だった。
 機銃の轟音など初めから無いかのように、少女――プルミエールの声が確と、イーリスの耳に届く。彼女こそ、イカロスと伴に動いた“もう一人”の人物。そんなプルミエールは銃座の脇を通るように、爆弾へと向かい滑り込みながらも、器用に長銃を連射する。
 ウィークバレットに依り軟化した部位に二人から鉛玉を叩き込まれ、爆弾は遂にその外殻に罅を走らせた。
 だが、ソレでも未だ存在を象徴し続けている。
「むー、硬いなー。じゃあ……」
 口を尖らせながらプルミエールは、滑り込みの勢いをそのままに、跳び上がった。同時に、長銃を収納するのと入れ替えに、瞬時に双機銃を携える。
「これならどうだー!」
 外見から推測する少女らしい無邪気な声を上げながら、プルミエールが宙で双機銃を振るった。
 両腕を左右交互だけでなく、躰全体をも使ったその動きは、まるで舞のようで。彼女の着用している衣装も相まって、イーリスが一瞬、引き金の手を緩めてしまう程に華麗なものだった。
 七、八、九――。
 舞と伴に振られた腕が九つを数えた刹那。夥しい鉛玉に塗れたであろう爆弾は、その形を保てなくなり、消えた。
 ソレは、イーリスが放つ機銃が数瞬空を貫く程に、放たれていた禍々しさからすれば、とても呆気の無いものだった。
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